dry_box’s blog

化学とゲームについて語りたい

嫌なスルホネートはDABCOで消し去れ!

私の会社は明日が休みとなっており、3連休を満喫しておりますが皆さんはいかがでしょうか。

暇があればテトリスポケモンユナイトをやって、したい勉強は後回しにしてしまう悪い習性をどうにかしたいと思う今日このごろです。。。

 

さて、本日紹介する論文がこちら。

"Removal of Alkyl Sulfonates Using DABCO"

https://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/acs.oprd.1c00335

 

というわけでVertex Pharma社のLeeさんらがOPRDに報告した論文になります。

アシルスルホンアミドという構造は薬化学では広く用いられており、極性を持たせたり水素結合を作ったりするのに便利な構造です。

ja.wikipedia.org

またこれの合成ってすごい簡単なんですよね。

対応する塩化スルホン酸とアミドを用意してトリエチルアミンとかの塩基存在下でグルグルかき混ぜるだけで出来ちゃいます。

アミドなんて薬の構造によく入ってる官能基だし、少し構造の調整したいなってときに容易に導入できるためスルホンアミドは重宝されてきました。

 

一方で、大量に薬を作るにあたっては溶媒も100%きれいなものでは価格が高くなってしまうため、どうしても数100ppmとかの量の不純物を含んだものを使用します。

著者らがこういった純度の溶媒で薬を作ろうとすると、この溶媒に含まれるアルコール(メタノールとかエタノールとか)が塩化スルホン酸と副反応を起こしてしまいアルキルスルホネートを副生します。

このアルキルスルホネートが厄介者で、DNAと反応したりといった変異原性(がんを誘発したり)を持つ化合物が多く知られています。

薬作って患者さんに投与するのに、病気にさせる可能性のある化合物が入っているなんてなったら誰も飲みませんよね…。

もちろん国はそんなものが入っていたら認可しませんが。

 

ということで、このアルキルスルホネートをできるだけ簡単・効率的に除去できないかを調査したというのがこの論文になります。

一般的に保護基を除去するのに用いられるアンモニア水や塩酸、水酸化ナトリウムでは77%の除去はできますが、若干量は残ってしまうことがわかりました。

一方でDABCOと呼ばれる塩基を用いて1日加熱していると100%除去できることを見出しております。

ja.wikipedia.org

DABCOって塩基性としてはトリエチルアミンぐらいなんですね。また構造については詳しく述べたいと思いますが、窒素の非共有電子対が外側にむき出しになっているので、求核性が極めて強いことが知られております。

この求核性がちょうどよくて、原薬のスルホンアミドは分解させずにアルキルスルホネートを分解することができるといった役割をしてくれます。

他にもピロリジンといった塩基もアルキルスルホネートの分解に使えるよってことを報告しています。

でもね、このピロリジンちょー臭いんです…。言ってしまえば男のアレのような…

しかもこのピロリジン、他の部位にケトンとかアルデヒドとかあるとイミンとかエナミンを作ってしまうので出来れば使いたくないですね。(とにかく臭いし)

ja.wikipedia.org

 

アルキルスルホネートの分解反応機構ですが、至ってシンプルなSN2反応で進行しアンモニウム塩を形成します。ですので、DABCO入れて加熱して水とか塩酸で分液するだけで除去ができてしまう!

手軽っていいね!

 

意外と溶媒効果はなくて2-MeTHFとかNMP、MeCN、EtOAc、tolueneなんかでも除去できるのはすごい便利ですね!

ただ溶媒に少し水が入っていないと分解速度が遅延するようなので古い溶媒のほうがいいのかもしれないですね。

 

今日はこの辺で。

もしわからないところとか気になる箇所、聞きたいことがありましたらコメント、DMお願いいたします。

ここまで見ていただきましてありがとうございました。